• 2025年9月28日
  • 2025年10月5日

肝臓専門医から見た医学の進歩|B型肝炎が飲み薬で安定治療が可能に

医学の世界は「日進月歩」と言われますが、まさにその通りだと日々実感します。
私が医師になってからも、消化器内科の分野だけでも数多くの進歩がありました。

その中でも特に印象的なのが、B型肝炎の治療です。(B型肝炎治療ガイドライン 日本肝臓学会

当時のB型肝炎診療

B型慢性肝炎は、普段は元気に過ごしていても突然「急性増悪」を起こし、肝臓の数値が数百〜数千に跳ね上がることがあります。場合によっては黄疸や肝不全に進行し、命にかかわることもあります。

私が明石市民病院の「肝臓内科」で診療していた頃は、若い患者さんも少なくなく、同年代の方を担当することもありました。

特に忘れられないのは、肝硬変を抱えたうえで急性増悪を起こし、入院された患者さんです。当時行える治療はインターフェロンが中心で、副作用も強く、十分な効果が得られないことも多々ありました。疲れた表情の患者さんに、思わしくない検査結果を繰り返し伝えなければならず、医師として無力さを痛感する日々でした。

治療法の劇的な変化

しかし今では、状況は大きく変わりました。

完治はまだ難しいものの、副作用がほとんどない飲み薬を継続することで、肝炎の進行を抑え、生活の質を大きく改善できるようになっています。

B型肝炎の外来診療は、かつてのように「緊張と覚悟の診察」ではなく、「薬、ちゃんと飲めていますか?」と確認するだけで終わることが多くなりました。患者さんが安定して通院できることは、医学が静かに、しかし確実に人々の暮らしを変えている証です。

医学の進歩を実感して

外来でB型肝炎のお薬を処方するたびに、かつての患者さんたちの顔が浮かびます。
そして、安定した笑顔を見られるたびに心の中でつぶやいてしまいます。

「いや〜、医学って、本当に“日進月歩”どころか“秒速”だな」と。

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