- 2025年3月11日
肝硬変の患者さんの腹水が増悪する理由!梅干しは体にいい?悪い?
最近、近くの公園へ梅の花を見に行きました。春の訪れを感じる瞬間ですね。
梅といえば、やっぱり「梅干し」。日本人にとってなじみ深い食べ物ですが、私には梅干しと聞くと必ず思い出すエピソードがあります。

私は学生時代から内視鏡に興味があり、消化器内科に入局しました。研修を受けながら、「将来的に内視鏡を専門にするのなら、まずは他の分野もしっかり学んでおきたい」と考え、特に肝臓の勉強に力を入れることにしました。そこで、2年間の研修を終え、次のステップとして選んだのが「明石市立市民病院」。
当時、この病院は全国的にも珍しく、消化器内科とは別の独立した「肝臓内科」が立ち上げられており、肝臓疾患の診療数では全国トップレベルでした(現在は消化器内科に統合)。私はそこで、まさに朝から晩まで肝臓漬けの日々を送ることになりました。

当然のことながら、末期肝硬変のため、大量の腹水で入院する方を多く診ました。診療を続けるうちに、ある疑問が浮かびます。
「大量腹水の患者さんに共通する食べ物があるのでは?」
複数の患者さんに食事内容を聞くと、やはり同じ食品の話が出てきます。それが「梅干し」だったのです。
梅干しが腹水に影響を与える理由
梅干しには意外と多くの塩分が含まれています。肝硬変の患者さんは、1日6g以下の塩分制限が必要ですが、昔ながらの梅干しには塩分が20%以上含まれているものもあります。たった一粒(15〜20g)でも塩分3g以上になり、2粒食べれば制限を超えてしまうのです。
塩分が腹水を増悪させるメカニズム
私たちの体は、血液中の塩分濃度を一定に保つために水分を蓄えます。そのため、塩分を多く摂ると、体内に水分が溜まりやすくなります。健康な人であれば、余分な水分を腎臓が適切に排出しますが、肝硬変の患者さんでは以下の理由により水分のコントロールが難しくなります。
- 血液中のタンパク質(アルブミン)が減少し、血管内に水を留めておく力が低下。
- 血管外に水分が漏れやすくなり、腹水やむくみが発生。
実際に、入院して塩分制限をすると腹水が減少し、症状が改善するケースが多くあります。これは、塩分を控えることで体内の水分バランスが整い、腹水の蓄積を抑えられるためです。
梅干しの健康効果と適切な摂取方法
もちろん、梅干しには健康に良い面もたくさんあります。

✅ クエン酸が豊富で疲労回復に役立つ
✅ 食欲増進に効果的
✅ 血流改善・抗菌作用(おにぎりに入れるのは理にかなっている)
最近では、塩分を大幅にカットした梅干しも増えてきました。梅干しは適量であれば健康的な食品ですが、肝硬変の患者さんにとっては塩分量に注意することが重要です。
食事管理では、「体に良い」とされる食品でも過剰摂取すると予想外の影響が出ることがあるため、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
まとめ
- 肝硬変の患者さんは塩分制限が必要(1日6g以下)
- 梅干しは塩分が多く、摂取量によっては腹水を悪化させる可能性がある
- 塩分を控えることで腹水のコントロールがしやすくなる
- 塩分カットされた梅干しを選ぶのも一つの方法
確証バイアス(自分の考えや経験に合った情報ばかりを重視すること)にとらわれず、科学的根拠に基づいた食事管理を意識しながら、健康的に梅干しを楽しんでくださいね!
肝臓の数値が悪いなどのご相談はお気軽に当院までご相談ください。