• 2026年4月26日

医師になった理由|「痛いのに感謝される」違和感が原点だった話

医師になった理由をよく聞かれます

「親御さんもお医者さんですか?」
診療室でよくいただくご質問です。

祖父や大叔父は医師でしたが、両親は医師ではありません。
いわゆる“医者の家系”というわけではない中で、なぜ医師を志したのか。

今回はその理由をお話ししたいと思います。

子どもの頃、医者は“敵”でした

よく「子どもの頃にお世話になった先生に憧れて」と聞きますが、私はむしろ逆でした。

当時の私にとって医者は、「痛いことをする人」。
風邪では喉を見られてえずき、中耳炎では耳や鼻をぐりぐり、喘息では点滴。

病院とは「何かしらやられる場所」で、できれば近づきたくない場所でした。

それでも心に残った“不思議な光景”

そんな私にとって、忘れられない光景があります。
大叔父の医院でのことです。

患者さんたちは採血や点滴といった“痛いこと”を受けながらも、
帰り際には笑顔で「ありがとうございました」と言って帰っていくのです。

……痛いことをする人に、お礼を言うのはなぜだろうか?

この違和感がどうしても気になり、
「医者ってなんなんだ?」と考えるようになりました。

気づけば、医師という仕事が少しずつ気になる存在になっていったのです。

中学生で出会ったもう一つの夢

そんな私に転機が訪れたのは中学生の頃。
まったく別の職業に憧れるようになります。

それが「F1エンジニア」です。

当時、日本は空前のF1ブーム。
アイルトン・セナが活躍していた時代です。

もともと機械いじりが好きだった私は夢中になりました。

やがて将来を考える中で、
「F1エンジニア」と「医師」という二つの道に行き着きます。

機械と人間――決定的な違い

どちらも専門的な技術を扱う仕事ですが、本質は大きく異なります。

F1エンジニアの相手は“機械”。
思い入れを持っても意思はなく、壊れれば交換されていきます。

一方で医師が向き合うのは“人間”です。
一人ひとりが意思を持ち、同じ存在は二つとありません。

そして人生は有限であり、医療には「見送ること」も含まれます。

「ありがとう」の意味を知りたくて

唯一無二の存在と長く関わり続ける仕事。
その重みと奥行きに、次第に惹かれていきました。

そして最後に背中を押したのは、やはりあの光景でした。

「痛いことをしているのに、感謝される」という不思議な関係。

医療とは、体を治すために、ときに体を傷つける行為でもあります。
一見すると矛盾したこの行為が、なぜ人の感謝につながるのか。

その答えを、自分自身の中で確かめてみたい。
そう思い、私は医師の道を選びました。

はらの内科クリニック 0798-52-8811 ホームページ