- 2026年8月9日
【抜釘入院記②】手術後、医師を襲った最大の敵は「空腹」でした
先日の抜釘手術の続きです。(▶️前話 【医師が患者になって分かった】入院初日は何をしている?抜釘手術で再入院した一日の流れ)
前回は、入院してみて初めて分かった「患者としての病院」を中心にお話ししました。
今回は、手術当日の話です。
ただし、手術そのものの話ではありません。
今回の主役は、まさかの「空腹」です。

◆手術当日、順調なスタート
手術当日は朝6時頃から、例の「栄養補給のジュース」をいただきました。
手術は13時30分の予定。
……のはずでしたが、実際には約1時間遅れての開始となりました。
これは病院では、ある意味「あるある」です。
手術はもちろん、診察や検査でも、すべてが機械のように予定どおり進むというほうが稀です。
前の手術が長引いたり、急な処置が入ったり、その時々で状況は変わります。
医療は工場のラインのように進められるものではありません。
医療者としては、これはある程度仕方のないことだと思う一方で、患者さんとして待つ側になると「まだかな」と思ってしまいます。患者さんにはしっかり説明しないとと反省しました。
さて、約1時間遅れて始まった手術。
手術室までの移動は歩きです。手術室ではスタッフの皆さんの見事な連携。ベッドに横になると、あっという間に麻酔がかかり、気が付けば病室に帰ってきていました。
前回の手術では、麻酔から覚めた後に神経ブロックによる腕のしびれがあり、その麻酔が切れると痛みが出る、さらに全身麻酔の影響による吐き気にも悩まされました。
ところが今回は違います。
夕方にはすっかり目も覚め、腕のしびれもありません。
そして何より、吐き気がない!
「薬を少し変えてみますね」
そう話してくださった麻酔科の先生に、心の中で感謝しました。
「今回は楽勝!」
そう喜んでいました。
……この時までは。
◆ここから長い戦いが始まった
実は、ここから思わぬ戦いが始まったのです。

その敵は……
空腹。
頭はスッキリ。
痛みもありません。
体調はむしろ絶好調です。
だからこそ、前回は気にする余裕もなかった「空腹」が、頭をもたげてきたのです。
考えてみれば、朝からジュース以外は何も食べていません。水分も手術数時間前からとっていません。
体調が良い分、食欲もしっかりあります。
しかし、術後当日は絶食なのです。体調の良し悪しで食事が決められるわけではありません。
消灯前にはようやく水が飲めるようになりました。
「これで少しは落ち着くかな」
と思いましたが、水だけでお腹が満たされるはずもありません。
◆引き出しの中に「敵」がいた
眠れずにベッドでゴソゴソしていると、ふと引き出しの中にあるものが目に入りました。
昨日食べ損ねた……

チョコレートです。
「1個くらいなら……。」
悪魔がささやきます。
しかし、その一方で、もう一人の自分がひと言。
「いやいや、医師だからこそダメでしょ。」
普段、患者さんに、
「食事の許可が出るまでは待ってくださいね」
とお話ししている立場です。
それなのに、自分が患者になった途端、
「1個くらいなら……」
という誘惑に負けそうになる。
患者さんの気持ちが、少し分かったような気がしました。
◆葛藤を続けた夜
夜中に目が覚めるたびに、
「食べようか……」
「いや、ダメだ。」
と葛藤。
チョコレートは、手の届くところにあります。
でも、食べてはいけない。
浅い眠りの中で、朝までこんな不毛な葛藤を繰り返し、長い夜を過ごしたのでした。
◆患者になって初めて分かること
普段は患者さんに「食事の許可が出るまで待ってくださいね」とお話ししている私ですが、いざ自分が患者になると、その「少し待つ」がこんなにも長く感じるとは……。
手術そのものは順調だったのに、この夜の私の最大の敵は、傷の痛みでも吐き気でもなく、引き出しの中のチョコレートでした。
